2013年09月19日

歌のお月見もぜひ。

−井伏鱒二【厄除け詩集】より訳詩
「静夜詩(李白)」
 ネマノウチカラフト気ガツケバ
 霜カトオモフイイ月アカリ
 ノキバノ月ヲミルニツケ
 ザイショノコトガ気ニカカル

−古今和歌集 雑歌上881
 ふたつなき物と思ひしを 水底に山のはならでいづる月かげ

−拾遺和歌集 秋171
 水の面(おも)に照る月浪をかぞふれば 今宵ぞ秋の最中(もなか)なりける

−【若山牧水歌集】より
 月の夜の青色の花揺らぐごと 人びとの顔浮ける停車場

−【高村光太郎詩集】より
「月にぬれた手」
 わたくしの手は重たいから
 さうたやすくはひるがへらない。
 手をくつがへせば雨となるとも
 雨をおそれる手でもない。
 山のすすきに月が照つて
 今夜もしきりに栗がおちる。
 栗は自然にはじけて落ち
 その音しづかに天地をつらぬく。
 月を月天子(がってんし)とわたくしは呼ばない。
 水のしたたる月の光は
 死火山塊から遠く来る。
 物そのものは皆うつくしく
 あへて中間の思念を要せぬ。
 美は物に密着し、
 心は造形の一義に住する。
 また狐が畑を通る。
 仲秋の月が明るく小さく南中する。
 わたくしはもう一度
 月にぬれた自分の手を見る。


posted by ひよこ豆 at 00:00 | 和歌