拾遺和歌集より、
三首…
風吹けば方も定めず散る花を
いづ方へ行く春とかは見む (拾遺和歌集・春76)
―吹く風にはらはらと舞い散る花は、まるで春が舞っているようで、
いったい、どちらの方向に春が去っていくのか見届けたいのに…
風に踊り空に舞い、まるではぐらかすようだ―
夏にこそ咲きかかりけれ藤の花
松にとのみも思ひける哉 (同・夏83)
―藤の花は松に咲き掛かるものだと思っていたのだが
なんと、春から夏にかけて咲きかかるものでもあったのだね―
卯の花を散りにし梅にまがへてや
夏の垣根に鶯の鳴く (同・夏89)
―真っ白く咲き誇る卯の花を、
もうとっくに散ってしまった梅の花と間違えているらしいよ。
夏の垣根で季節はずれの鶯が鳴いている―
2015年05月06日
posted by ひよこ豆 at 20:59
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2015年04月29日
梓弓(あずさゆみ)春たちしより
年月の いるがごとくもおもほゆるかな (古今集・春歌下127)
― 一年が始まって春が来て、
そのあとの季節の何と早く過ぎることか…
まるで弓矢が飛んでいくようにあっという間に年月は巡ってしまう。
惜しめどもとどもらなくに
春霞帰る道にしたちぬと思へば (同130)
― どんなに惜しんで引き止めたところで春はいつまでも留まってはくれない。
惜しんでいるその間に、春霞がついに帰路についてしまった。
年月の いるがごとくもおもほゆるかな (古今集・春歌下127)
― 一年が始まって春が来て、
そのあとの季節の何と早く過ぎることか…
まるで弓矢が飛んでいくようにあっという間に年月は巡ってしまう。
惜しめどもとどもらなくに
春霞帰る道にしたちぬと思へば (同130)
― どんなに惜しんで引き止めたところで春はいつまでも留まってはくれない。
惜しんでいるその間に、春霞がついに帰路についてしまった。
posted by ひよこ豆 at 21:37
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2015年04月01日
西行法師の桜を三景
『西行全歌集』の中から「山家集・中-597〜599」
―花に寄する恋
つれもなき人に見せばや さくら花 風に随ふ心よわさを
風に乗ってはらはらと花を散らす桜のように
薄情なあなたからふらふらと離れていきそうになる私の弱い心を
あなたに見せてあげたい
花を見る心はよそに隔たりて 身に付きたるは 君が面影
錦のように美しく今が盛りと咲き誇る花を見ても
ちっとも胸が踊らない。
ただただ君のことを想って、君の面影ばかりを想って
それだけが私の心を踊り焦がせる。
―残花に寄する恋
葉隠れに散りとどまれる花のみぞ 忍びし人に逢ふ心地する
淡い新緑の葉にそっと隠れるように咲く残りの桜を見つけました。
忍んでしか逢えないあなたに逢えた気がしました。
『西行全歌集』の中から「山家集・中-597〜599」
―花に寄する恋
つれもなき人に見せばや さくら花 風に随ふ心よわさを
風に乗ってはらはらと花を散らす桜のように
薄情なあなたからふらふらと離れていきそうになる私の弱い心を
あなたに見せてあげたい
花を見る心はよそに隔たりて 身に付きたるは 君が面影
錦のように美しく今が盛りと咲き誇る花を見ても
ちっとも胸が踊らない。
ただただ君のことを想って、君の面影ばかりを想って
それだけが私の心を踊り焦がせる。
―残花に寄する恋
葉隠れに散りとどまれる花のみぞ 忍びし人に逢ふ心地する
淡い新緑の葉にそっと隠れるように咲く残りの桜を見つけました。
忍んでしか逢えないあなたに逢えた気がしました。
posted by ひよこ豆 at 21:15
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2015年03月12日
桃の和歌といえば万葉集に一首。
春の苑(その) 紅(くれない)にほふ 桃の花
下照る道に 出で立つ少女(おとめ) (万葉集)
西行法師の一首。
桃園の花にまがへる照鷽の
群れ立つ折りは 散る心地する (山家集下1400)
-桃園で遊ぶ沢山の照鷽のその美しい喉元はまるで風に揺れる花のよう
軽やかな羽音があたりに響いて群れが飛び立つと
それはまるで花が一斉に舞い散るようだ-
春の苑(その) 紅(くれない)にほふ 桃の花
下照る道に 出で立つ少女(おとめ) (万葉集)
西行法師の一首。
桃園の花にまがへる照鷽の
群れ立つ折りは 散る心地する (山家集下1400)
-桃園で遊ぶ沢山の照鷽のその美しい喉元はまるで風に揺れる花のよう
軽やかな羽音があたりに響いて群れが飛び立つと
それはまるで花が一斉に舞い散るようだ-
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2015年01月06日
七草の節句に。
君がため春の野にいでて若菜つむ
我が衣手に雪はふりつつ (古今集・春歌上21)
−君にあげたくて野原で若菜を摘んでいたら
春の淡雪が私の袖にちらりはらりと舞い降りてきました−
春日野の若菜つみにや
しろたへの袖ふりはへて人のゆくらん (同22)
−春日野に若菜を詰みに行くのだろうか。
ほら、たおやかな乙女が真っ白な着物の袖を
ふわりはらりと舞い振りながら歩いている…
君がため春の野にいでて若菜つむ
我が衣手に雪はふりつつ (古今集・春歌上21)
−君にあげたくて野原で若菜を摘んでいたら
春の淡雪が私の袖にちらりはらりと舞い降りてきました−
春日野の若菜つみにや
しろたへの袖ふりはへて人のゆくらん (同22)
−春日野に若菜を詰みに行くのだろうか。
ほら、たおやかな乙女が真っ白な着物の袖を
ふわりはらりと舞い振りながら歩いている…
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2014年12月24日
雲さえて里ごとにしく秋の夜の
氷は月の光なりけり (『西行全歌集』より松屋本山家集・秋32)
−シンと静まり返った秋の夜。雲が切れて月が現れると
世界はすぐに氷りついて。
草木も小さな池も、
家々の藁葺き屋根も、道端のぬかるみでさえも…
月色に青白く光るのだ−
氷は月の光なりけり (『西行全歌集』より松屋本山家集・秋32)
−シンと静まり返った秋の夜。雲が切れて月が現れると
世界はすぐに氷りついて。
草木も小さな池も、
家々の藁葺き屋根も、道端のぬかるみでさえも…
月色に青白く光るのだ−
タグ:西行法師
posted by ひよこ豆 at 22:43
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2014年10月23日
山田作れば庵寝(いおね)する いつかこの田を刈り入れて
思ふ人と寝(にょ)うずらう 寝にくの枕や 寝にくの庵(いお)の枕や
(閑吟集・176)
−山を切り拓いて田んぼを作って田植えをする。
そうして季節が巡って稲穂が垂れると小さな小屋を作って泊まり込み
せっせせっせと稲を刈る。
頭を垂れてせっせせっせと稲穂を刈りながら
頭を上げるとまだまだ続く黄金の実り。
嗚呼。いつになれば全部刈り取って、愛しい愛しいあの人と寝られるやら…
稲穂を渡る夜風を聞きながら独り眠る。
なんて硬い硬い枕だ。なんて冷たい冷たい床なんだ。
思ふ人と寝(にょ)うずらう 寝にくの枕や 寝にくの庵(いお)の枕や
(閑吟集・176)
−山を切り拓いて田んぼを作って田植えをする。
そうして季節が巡って稲穂が垂れると小さな小屋を作って泊まり込み
せっせせっせと稲を刈る。
頭を垂れてせっせせっせと稲穂を刈りながら
頭を上げるとまだまだ続く黄金の実り。
嗚呼。いつになれば全部刈り取って、愛しい愛しいあの人と寝られるやら…
稲穂を渡る夜風を聞きながら独り眠る。
なんて硬い硬い枕だ。なんて冷たい冷たい床なんだ。
タグ:閑吟集
posted by ひよこ豆 at 22:05
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2014年10月01日
道しらば 尋ねもゆかん もみぢばをぬさとたむけて
秋はいにけり (古今集・秋歌下313)
−もしもこの美しかった秋が過ぎた道筋がわかるのなら
追いかけて尋ねて行ってみようか…。
錦のような紅葉を神々へのお供えにして、秋はもう
去ってしまったのだ−
竜田川錦おりかく
神無月 しぐれの雨をたてぬきにして (古今集・冬歌314)
−川面に映り込む色とりどりの紅葉。
瀬を流れ、淀みに留まる数え切れないほどの鮮やかな紅葉。
竜田川はまるで美しい錦の織物のようだ。
神無月に降り敷く時雨が織り上げた錦だ−
かなり強引な意訳ではありますが…
こんな光景が見えるような気がします。
私はこんなに文字数を費やすのに、
歌人たちはたったの三十一文字で表してしまう。
秋はいにけり (古今集・秋歌下313)
−もしもこの美しかった秋が過ぎた道筋がわかるのなら
追いかけて尋ねて行ってみようか…。
錦のような紅葉を神々へのお供えにして、秋はもう
去ってしまったのだ−
竜田川錦おりかく
神無月 しぐれの雨をたてぬきにして (古今集・冬歌314)
−川面に映り込む色とりどりの紅葉。
瀬を流れ、淀みに留まる数え切れないほどの鮮やかな紅葉。
竜田川はまるで美しい錦の織物のようだ。
神無月に降り敷く時雨が織り上げた錦だ−
かなり強引な意訳ではありますが…
こんな光景が見えるような気がします。
私はこんなに文字数を費やすのに、
歌人たちはたったの三十一文字で表してしまう。
タグ:古今集
posted by ひよこ豆 at 21:58
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2014年06月27日
万葉集・巻五802の山上憶良の歌−
瓜食(は)めば 子ども思ほゆ
栗食めば まして偲(しぬ)はゆ
いづくより 来りしものそ 眼交(まなかひ)に
もとなかかりて 安眠(やすい)し寝(な)さぬ
−瓜を食べると子供のことを思い出し
栗を食べると「ああ、あの子の好物だ。食べさせてやりたい」などと
もっともっと思い出してしまう。
なぜこんなにも愛おしいのだろう。
あの子の愛らしい面影はいったいどこから来たのだろう。
「どうしているだろうか、泣いてはいないだろうか」
気にかかって気になってゆっくりと眠ることもできない。−
瓜食(は)めば 子ども思ほゆ
栗食めば まして偲(しぬ)はゆ
いづくより 来りしものそ 眼交(まなかひ)に
もとなかかりて 安眠(やすい)し寝(な)さぬ
−瓜を食べると子供のことを思い出し
栗を食べると「ああ、あの子の好物だ。食べさせてやりたい」などと
もっともっと思い出してしまう。
なぜこんなにも愛おしいのだろう。
あの子の愛らしい面影はいったいどこから来たのだろう。
「どうしているだろうか、泣いてはいないだろうか」
気にかかって気になってゆっくりと眠ることもできない。−
タグ:万葉集
posted by ひよこ豆 at 21:42
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2014年06月17日
6/18の記事に関連して。
木(こ)のまより もりくる月のかげ見れば
心づくしの 秋はきにけり (古今集・秋歌上184)
秋の美しさを詠んだとても素晴らしい歌です。
暑い暑い夏が過ぎ去って
実りの秋がやっとやって来た喜びと
秋の月の美しさがじんわりと伝わってきます。
木(こ)のまより もりくる月のかげ見れば
心づくしの 秋はきにけり (古今集・秋歌上184)
秋の美しさを詠んだとても素晴らしい歌です。
暑い暑い夏が過ぎ去って
実りの秋がやっとやって来た喜びと
秋の月の美しさがじんわりと伝わってきます。
タグ:古今集
posted by ひよこ豆 at 21:50
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2013年09月19日
歌のお月見もぜひ。
−井伏鱒二【厄除け詩集】より訳詩
「静夜詩(李白)」
ネマノウチカラフト気ガツケバ
霜カトオモフイイ月アカリ
ノキバノ月ヲミルニツケ
ザイショノコトガ気ニカカル
−古今和歌集 雑歌上881
ふたつなき物と思ひしを 水底に山のはならでいづる月かげ
−拾遺和歌集 秋171
水の面(おも)に照る月浪をかぞふれば 今宵ぞ秋の最中(もなか)なりける
−【若山牧水歌集】より
月の夜の青色の花揺らぐごと 人びとの顔浮ける停車場
−【高村光太郎詩集】より
「月にぬれた手」
わたくしの手は重たいから
さうたやすくはひるがへらない。
手をくつがへせば雨となるとも
雨をおそれる手でもない。
山のすすきに月が照つて
今夜もしきりに栗がおちる。
栗は自然にはじけて落ち
その音しづかに天地をつらぬく。
月を月天子(がってんし)とわたくしは呼ばない。
水のしたたる月の光は
死火山塊から遠く来る。
物そのものは皆うつくしく
あへて中間の思念を要せぬ。
美は物に密着し、
心は造形の一義に住する。
また狐が畑を通る。
仲秋の月が明るく小さく南中する。
わたくしはもう一度
月にぬれた自分の手を見る。
−井伏鱒二【厄除け詩集】より訳詩
「静夜詩(李白)」
ネマノウチカラフト気ガツケバ
霜カトオモフイイ月アカリ
ノキバノ月ヲミルニツケ
ザイショノコトガ気ニカカル
−古今和歌集 雑歌上881
ふたつなき物と思ひしを 水底に山のはならでいづる月かげ
−拾遺和歌集 秋171
水の面(おも)に照る月浪をかぞふれば 今宵ぞ秋の最中(もなか)なりける
−【若山牧水歌集】より
月の夜の青色の花揺らぐごと 人びとの顔浮ける停車場
−【高村光太郎詩集】より
「月にぬれた手」
わたくしの手は重たいから
さうたやすくはひるがへらない。
手をくつがへせば雨となるとも
雨をおそれる手でもない。
山のすすきに月が照つて
今夜もしきりに栗がおちる。
栗は自然にはじけて落ち
その音しづかに天地をつらぬく。
月を月天子(がってんし)とわたくしは呼ばない。
水のしたたる月の光は
死火山塊から遠く来る。
物そのものは皆うつくしく
あへて中間の思念を要せぬ。
美は物に密着し、
心は造形の一義に住する。
また狐が畑を通る。
仲秋の月が明るく小さく南中する。
わたくしはもう一度
月にぬれた自分の手を見る。
posted by ひよこ豆 at 00:00
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2013年08月17日
瓜食(は)めば 子ども思ほゆ 栗食めばまして偲はゆ
いづくより 来りしものそ 眼交(まなかひ)に
もとなかかりて 安眠し寝さぬ(やすいしなさぬ) 万葉集巻5−802
まくわうりを食べれば子どものことが思い出され、
栗を食べればあの子にも食べさせてやりたいと思ってしまう。
どうしてこんなにかわいいのだろう。
子どもの面影はいったいどこから来るのだろう。
気になってゆっくり眠ることもできない。(『万葉集の植物』吉野正美解説・偕成社)
いづくより 来りしものそ 眼交(まなかひ)に
もとなかかりて 安眠し寝さぬ(やすいしなさぬ) 万葉集巻5−802
まくわうりを食べれば子どものことが思い出され、
栗を食べればあの子にも食べさせてやりたいと思ってしまう。
どうしてこんなにかわいいのだろう。
子どもの面影はいったいどこから来るのだろう。
気になってゆっくり眠ることもできない。(『万葉集の植物』吉野正美解説・偕成社)
posted by ひよこ豆 at 08:05
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2013年07月07日
久方のあまのかはらの渡守
君渡りなばかぢ隠してよ (古今集 秋174)
天の川原の渡し守よ。
あの方が渡ってしまわれたなら、舟のかじを隠してしまってください
(お帰りになれないようにするために)。
けふよりはいまこむ年のきのふをぞ
いつしかとのみまちわたるべき (古今集 秋183)
今日からは、来年の昨日(七月七日)を早く来ればよいがとばかり
待ち続けねばならないのであろうか。
『古今和歌集 全訳注(二)』講談社学術文庫
君渡りなばかぢ隠してよ (古今集 秋174)
天の川原の渡し守よ。
あの方が渡ってしまわれたなら、舟のかじを隠してしまってください
(お帰りになれないようにするために)。
けふよりはいまこむ年のきのふをぞ
いつしかとのみまちわたるべき (古今集 秋183)
今日からは、来年の昨日(七月七日)を早く来ればよいがとばかり
待ち続けねばならないのであろうか。
『古今和歌集 全訳注(二)』講談社学術文庫
posted by ひよこ豆 at 07:52
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2013年06月30日
底清み流るる河のさやかにも
はらふることを神は聞かなん
よみ人知らず 拾遺和歌集 夏133
−水底が清らかなので、流れる川が澄み切っているように、
清浄な心で祓をして祈願したことを、神もどうか聞き入れてほしい。
さばへなす荒ぶる神もおしなべて
今日はなごしの祓なりけり
藤原長能 拾遺和歌集 夏134
−五月の蠅のように、騒がしく荒々しい国つ神も
皆一様に穏やかになることを願って、今日六月の晦日は、
辺り一帯に夏越の祓をする日だったよ。
(岩波書店「新日本古典文学大系7 拾遺和歌集」より)
はらふることを神は聞かなん
よみ人知らず 拾遺和歌集 夏133
−水底が清らかなので、流れる川が澄み切っているように、
清浄な心で祓をして祈願したことを、神もどうか聞き入れてほしい。
さばへなす荒ぶる神もおしなべて
今日はなごしの祓なりけり
藤原長能 拾遺和歌集 夏134
−五月の蠅のように、騒がしく荒々しい国つ神も
皆一様に穏やかになることを願って、今日六月の晦日は、
辺り一帯に夏越の祓をする日だったよ。
(岩波書店「新日本古典文学大系7 拾遺和歌集」より)
posted by ひよこ豆 at 07:59
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2013年01月17日
立川の友達から届いた葱は、
長さ二尺の白根を横へて
ぐつすりアトリエに寝こんでゐる。
三多摩平野をかけめぐる
風の申し子、冬の精鋭。
俵を敷いた大胆不敵な葱を見ると、
ちきしやう、
造形なんて影がうすいぞ。
友がくれた一束の葱に
俺が感謝するのはその抽象無視だ。
(1925.12)
白凰社 『高村光太郎詩集』より
長さ二尺の白根を横へて
ぐつすりアトリエに寝こんでゐる。
三多摩平野をかけめぐる
風の申し子、冬の精鋭。
俵を敷いた大胆不敵な葱を見ると、
ちきしやう、
造形なんて影がうすいぞ。
友がくれた一束の葱に
俺が感謝するのはその抽象無視だ。
(1925.12)
白凰社 『高村光太郎詩集』より
タグ:高村光太郎
posted by ひよこ豆 at 07:29
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2012年12月20日
冬 井伏鱒二
三日不言詩口含荊棘
昔の人が云ふことに
詩を書けば風邪を引かぬ
南無帰命頂礼
詩を書けば風邪を引かぬ
僕はそれを妄信したい
洒落た詩でなくても結構だらう
書いては消し書いては消し
消したきりでもいいだらう
屑籠に棄ててもいいだらう
どうせ棄てるもおまじなひだ
僕は老来いくつ詩を書いたことか
風邪で寝た数の方が多い筈だ
今年の寒さは格別だ
寒さが実力を持ってゐる
僕は風邪を引きたくない
おまじなひには詩を書くことだ
(井伏鱒二『厄除け詩集』より)
三日不言詩口含荊棘
昔の人が云ふことに
詩を書けば風邪を引かぬ
南無帰命頂礼
詩を書けば風邪を引かぬ
僕はそれを妄信したい
洒落た詩でなくても結構だらう
書いては消し書いては消し
消したきりでもいいだらう
屑籠に棄ててもいいだらう
どうせ棄てるもおまじなひだ
僕は老来いくつ詩を書いたことか
風邪で寝た数の方が多い筈だ
今年の寒さは格別だ
寒さが実力を持ってゐる
僕は風邪を引きたくない
おまじなひには詩を書くことだ
(井伏鱒二『厄除け詩集』より)
posted by ひよこ豆 at 23:00
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